地方の暮らしと都会の暮らしは、同じ日本でも全く異なるものなのでしょうか。
こうした地方と都会の暮らしにについて、『年収400万円の田舎暮らし公務員v.s.年収600万円の一部上場会社勤務で東京暮らし』という話題がネット上で繰り広げられており、「田舎暮らしの公務員最強説」を発信者が主張していました。
そこで本日は、「年収400万円の田舎暮らし」と「年収600万円の都会暮らし」について、細かな生活水準を設定したシミュレーションを行うことで、実際にどちらの暮らしが最強なのかを探ってみたいと思います。
年収400万円・田舎暮らしとは
✓夫:30歳/会社員/年収400万円
✓妻:30歳/パート/年収100万円
✓子:0歳
✓貯蓄:300万円
田舎暮らしということで、ここでは2016年の推計人口人数が最も少ない「鳥取県」(人口約57万人)を想定した暮らしをシミュレーションしていくことにします。
年収600万円・都会暮らしとは
✓夫:30歳/会社員/年収600万円
✓妻:30歳/パート/年収100万円
✓子:0歳
✓貯蓄300万円
一方の都会暮らしについては、2016年の推計人口人数が最も多い「東京都」(人口約1364万人)を想定した暮らしをシミュレーションしていくことにします。
設定の補足情報
家族構成については、どちらの家族も夫婦共に30歳、子供は1人で0歳とします。画像は女の子になっていますが、後述するシミュレーションには性別は影響がありません。
それぞれの設定年収については、平成28年賃金構造基本統計調査(厚生労働省)をもとに住んでいる場所の平均所得値
- 鳥取県…約384万円
- 東京都…約606万円
に近いキリの良い値を設定することにしました。
さらに、年収以外の情報としては
- 妻の年収100万円
- 夫の年収上昇率2%
- 貯金300万円
を差をつけずにそれぞれの暮らしにおける共通数値として扱っていくことにします。
それぞれの暮らしの生活水準
それぞれの暮らしをシミュレーションしていくにあたり、主に
- 生活費
- 住居費
- 教育費
- 自動車費
について見ていくことにします。
生活費について
生活費については、平成28年家計調査報告(総務省統計局)から各都市の平均値を参考にしていくことにします。
生活費では都会と田舎ではおよそ月々43,000円もの差が開いていることが分かります。
特に、都会と田舎で差が大きな支出としては
- 食費(1万6,649円の差)
- 教養娯楽(1万1,489円の差)
です。1か月でこれほど違うということで、1年にすると大きな金額になりますね。外食や娯楽施設へ出向く頻度は、都会の方が圧倒的に多くなるのでしょうね。田舎では昼ランチなんてまずないですから。
意外な点としては、交通通信費については都会より田舎が高額になっている点です。
これについて考えられる背景は、都会は公共交通機関が発達しているため自動車を持たずに暮らしていけるのに対し、田舎では自動車は必須アイテムであり、夫婦2人とも自動車を所有しているケースが多いことが考えられます。
そして、ここではシミュレーションを行うにあたり、生活費を平均値の10%節約した家庭を仮定していくことにします。
✓田舎:20万8781円
✓都会:24万7626円
住居費について
住居費については、「月収の4分の1」が目安ではないかという情報がネット上で多く確認できます。そこで、ここではこの月収の4分の1を家賃の目安として、借りられる賃貸住宅に住み続けていくことを想定します。
年収400万円の田舎暮らしと年収600万円の都会暮らしではどのような水準の住宅に住むことができるのでしょうか。具体的に住宅サイトを利用し、見てみることにしましょう。
田舎の住宅事情
田舎暮らし・夫の年収は400万円ですので、月収は28万円程度と予想されます。(ボーナスは64万円)ということは、目安の家賃相場がおよそ7万円ということになります。
では、鳥取県で7万円出すとどんな家に住むことができるのでしょうか。住宅サイト・SUUMOで調べてみると…
間取り:住宅サイト・SUUMOより
- 想定場所:鳥取市
- 間取り:2LDK~3LDK
- 戸建ての物件も可能
- 専有面積:およそ70㎡
- 築3年~5年
- 最寄り駅まで徒歩4分
以上のような条件の住宅に住むことができることが分かりました。
LDK12畳・それぞれの寝室が8~9畳と家族3人で暮らすには申し分ない広さとなっています。グーグルマップで見てみると、駅も近く・周辺環境(学校やスーパーなど)も整っていることが確認でき、鳥取市で家賃7万円も出せばかなり高水準の住居環境に身を置くことができます。
都会の住宅事情
都会暮らし・夫年収は600万円ですので、月収は40万円程度と予想されます。(ボーナスは120万円)ということで、目安の家賃相場は10万円ということになります。
では、東京都で10万円出すとどのような家に住むことができるのでしょうか。
間取り:住宅サイト・SUUMOより
- 想定場所:世田谷区
- 間取り:2LDK
- 専有面積:およそ40㎡
- 築30年くらい
- 最寄り駅まで徒歩15分
以上のような条件の住宅に住むことができることが分かりました。
築30年ということで物件写真を見ると、かなり年季のある住宅や設備の家になります。広さも2人で6畳の部屋に寝ることを考えると、子供が大きくなってきてからは苦労がありそうです。
✓田舎:月7万円で築浅物件
✓都会:月10万円で築30年物件
教育費について
教育費については、進学する状況(公立か私立)により必要な金額が大きく異なります。
ここでは田舎と都会の進学状況を踏まえ、それぞれの最頻値としての進学状況から次のような進学状況を想定していきます。
田舎での教育水準
田舎では基本、公立の進学先がメインになります。
高校卒業後は、私立大学への進学が最も多く、その場合、近くに大学が少ないことから県外の大学に進学することケースが目立ちます。
都会での教育水準
都会での進学形態としては、高校から私立に通い始めるケースが最も多くなります。
また、学費以外に発生する習い事や塾等への出費についても、都会暮らしと田舎暮らしでは差が出ます。
文部科学省の全国学力テストでの通塾率をみると
- 都会…55%程度
- 田舎…35%程度
と大きな開きがあることが確認できます。
✓田舎:高校まで公立/大学は私立大学で下宿
✓都会:高・大は私立/大学は自宅通学/通塾
また保育料については、それぞれ鳥取市の保育料(世帯年収500万円)と世田谷区の保育料(世帯年収700万円)を参照すると次のような保育料の違いが見られました。
余談ですが、もし鳥取市で世帯年収700万円だと、3歳児未満は月額52,000円にもなります。
自動車費
自動車については、田舎と都会で大きく置かれる状況が異なってきます。
生活費のところでも触れたように、都会ではマイカーを所有する必要がない場合が多いのに対し、田舎では家族1台というよりも一人1台の自動車保有が必須の地域があります。
車を持つということは
- ガソリン代
- 保険代
- 税金代
- 車検代
- 事故等のリスク
などが発生しますので、こうした自動車関連費は生活していくうえで家計への影響が大きいはずです。
✓田舎:2台で300万円(隔7年)
✓都会:車は保有しない
それぞれの暮らしの未来予想図
ここまで想定してきたそれぞれの暮らしと年収で家計の未来をシミュレーションするとどうなるのでしょうか。ライフプランシミュレーションを使って、それぞれの家族の家計未来をシミュレーションしてみました。
年収400万円の田舎暮らし
なんと上記の生活水準を保った生活を、田舎で年収400万円(30歳時点)にて送ろうとすると家計破たんしてしまうという結果になりました。
生活費は平均よりも1割節約し、子供は高校まで公立という努力と好条件が加えられているにも関わらず、家計破たんしてしまうということに驚きます。
年収600万円の都会暮らし
一方、都会で年収600万円(30歳時点)あれば順調な未来が待っているという結果になりました。
生活費は田舎暮らし同様1割の節約をしましたが、教育費にはついては田舎暮らしの教育費より年20万円のプラス(小学校から高校)をしたシミュレーションを行っています。
貯蓄状況を見てみると、子供が大学に進学した際も自宅から通うで家計に大きなダメージを与えていないことが見て取れます。
以上の、2つの暮らしの家計シミュレーションを見る限り
年収600万円・都会暮らし最強
という結論になりました。
このシミュレーション結果からもお分かりのように、平均的な暮らしをしていくのは想像以上に難しい世の中になりました。
これからの時代、日本で生きていくには何かをあきらめる必要がありそうです。
条件を変えて考察してみよう
では、田舎暮らしと都会暮らしの夫婦が、60歳時点で同じ貯蓄状況になるには生活水準をどのように変えていけば良いのでしょうか。
田舎暮らしの生活水準
年収400万円の田舎暮らしで貯蓄2000万円(60歳時点)を達成した生活水準は以下のようなものでした。
生活費は鳥取県の平均水準より5万円の節約をし、自動車購入費は300万円から250万円に減額しました。2台で250万円ですから軽自動車を2台か、中古車を乗り継ぐことになります。
また、家賃も6万円に下げることから、この金額では築15年程度の広さ55㎡の物件に水準を下げる必要性が出てきます。
一番大きな家計負担となる大学費用は、もはや貯蓄では賄いきれず奨学金をあてにしなくてはいけません。ここでは480万円もの奨学金を子供に背負ってもらうことでようやく60歳時点で2000万円の貯蓄が可能になりました。
都会暮らしの水準
一方の、都会ではすでに貯蓄3000万円(60歳時点)を達成していました。そこで、田舎暮らしと同様の貯蓄2000万円になるように、こちらは生活水準を上げていくことにします。
年収600万円の都会暮らしで貯蓄2000万円(60歳時点)を達成した生活水準は以下のようなものでした。
生活費は東京都平均水準より月2万5000円の節約をすれば、家賃は月13万円に水準を上げることができました。
月13万円の家賃だと、世田谷区では築3年程度の築浅物件や広さが80㎡の物件まで選ぶことができるようになります。家賃に月13万円も掛けるのであれば、もはやマンション購入も選択に入ってきます。
塾代は田舎暮らしより小学校時代から高校時代まで年間20万円多く掛けることができ、さらに奨学金に頼ることなく子供を大学まで送り出してあげることができるのです。
シミュレーションから見えた本質
あくまでも机上の空論ではありますが、ここでのシミュレーションを見る限り「年収400万円・田舎暮らし」vs「年収600万円・都会暮らし」では圧倒的に年収600万円の都会暮らしの方が最強という結論に至りました。
ただし、ここで設定した条件が変われば、当然2つの暮らしは全く違った未来になるでしょう。
- 都会で車を所有
- 都会で子供を県外の大学に進学
このような条件変化が起これば違ったシミュレーション結果になるはずです。
私がこのシミュレーションを通じて、本質的に都会の600万円が最強と感じた点は、選択肢を多く持てるということです。
お金がある都会暮らしであれば
- 車を持つか・持たないかの選択
- 子供に教育投資をするかの選択
- 大学は自宅か一人暮らしかの選択
など多くの選択肢があります。一方の田舎暮らしでは
- 車は一人1台必須
- 大学は自宅から通えない
という選択肢がない状態にあるわけです。
生活費の節約も生きていく上での最低限の費用は、都会であっても田舎であってもさほど大きく違うわけではないでしょうから、節約できる幅も都会のほうが大きいはずです。
このように、ここでシミュレーションした年収600万円程度の稼ぎがあれば、様々な選択肢を用意した暮らしができることこそ、本質的な年収600万円の都会暮らしが最強な理由ではないでしょうか。
この記事を書くにあたり参考にしたサイトでは田舎の公務員が最強ということでしたが、私はその田舎の公務員を辞めた経験があります。
公務員から一般企業に転職して年収1000万円になった方法をシェアします生き方は様々ですので、当サイトが何かのひとつでも参考になったら幸いです。
本日は、『勝ち組はどっち?年収400万円の田舎暮らし vs 年収600万円の都会暮らし』についてシミュレーションをしてみました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
都会は車を「持つか持たないか」の選択肢があるってホントですかね?
田舎は確かに「持つしかない」かもですけど、都会は「持ちたくても持てない」のでは。。。
車が人生に必要ないって人はそら都会が最強にみえるでしょうけど
あとは精神的なゆとりがどうつくれるかですよね~。